オープニングを飾る彰(G・Programming)作のインスト“TYCOON”から6曲目“LONE WOLF”まで、未音源化だった新曲が並ぶ序盤。これがまず常軌を逸している。周知のとおりUVERworldは前作『Ø CHOIR』からこの『TYCOON』に至るまでにシングルを5作リリースしており、そのいずれもが、カップリング曲含めてライブのハイライトを担う強烈なナンバーになっていた。ポップミュージックのアルバムでは、ヒット曲をアルバム序盤に配置するのがセオリーだが、オリコンチャートのトップ5圏内に送り込まれてきたシングル曲群が『TYCOON』の序盤には見当たらない。なぜかというと、初音源化のアルバム曲が素晴らしすぎるからだ。
「大切な人、護るべきもの」という、反骨のキャリアの中で大人になった彼らが見つけたテーマを歌う“Q.E.D.”や“シリウス”。克哉(G)とTAKUYA∞(Vo・Programming)の共作クレジットとなったエモーショナルなラブソング“SHOUT LOVE”。より強靭に成長したグルーヴが6人の結束力ごと思いを運ぶ“IDEAL REALITY”。そして、意志をもったひとりひとりを尊重するからこそ、馴れ合いを許さない名曲“LONE WOLF”。現代型EDMの扇動的なシンセリフや、鮮やかなジャズピアノのフレーズ、荘厳なストリングスアレンジを纏いながら、すべての楽曲がロックバンドの生々しい肉体性をもったサウンドとして仕上げられている。これでもかと丸裸の言葉を詰め込みながら、多様なボーカル表現を丹念に形にしてゆくTAKUYA∞の姿勢もかつてないほど素晴らしい。
その後は、一発一発が体重を乗せたヘヴィブローであるシングル曲や映像プロジェクトのテーマ曲“ほんの少し”などが続くのだが、信人(B)とTAKUYA∞の共作トラックとなった“奏全域”は、“I LOVE THE WORLD”や“DECIDED”すら凌ぐ圧巻のEDMロックナンバーでびっくりさせられる。バンドのコンビネーションを信じているからこそあらゆる表現スタイルを呑み込むことができるUVERworldの、現時点での真骨頂を見るような一撃だ。幼馴染みコンビのやっちまえ感も透かし見えてきて楽しい、アルバムをラストスパートへと持ち込む楽曲である。
そして辿り着く最終ナンバー“終焉”の、飾り気のない言葉とロックサウンドで描かれる感涙のクライマックス。極めてストレートなロックバラードなのに、“Q.E.D.”も“LONE WOLF”も“PRAYING RUN”も“DECIDED”も、すべて内包し再確認するように思いが伝い、人間臭い意志と体温をもった結論へと導いている。見事すぎてぐうの音も出ない。誰かに鳴らして欲しかった音が鳴らされ、誰かに歌って欲しかったことが歌われているロックアルバム。あなたにとっては、どうだろうか。(小池宏和)