【今週の一枚】あいみょん、新アルバム『瞬間的シックスセンス』はなぜ何も包み隠さずに人々を繋ぐアルバムになったのか?

『瞬間的シックスセンス』
シンガーソングライター・あいみょんの2ndフルアルバム『瞬間的シックスセンス』が2月13日にリリースとなった。

「第六感が働く時」、「直感が働く時」というのは一瞬だ。「あ」と声に出す間もなくそれは動くし、そこに明確な理由が無いことだってある。とはいえそれを感じたのは紛れもなく自分の無意識で、「なんとなく」という理由は不安定でこそあるけれど一番本質的なんじゃないかなぁと思う。そんな瞬間的で人間的な感覚を大切にし、過度に装飾することもせずにナチュラルに音楽にするあいみょんの楽曲を聴いて本能的に「良い」と思うことはとても自然なことだと思う。特に今作にも収録されている“マリーゴールド”を最初に聴いた時は彼女のそういった才にえらく感動したものだ。

そして、シングルリリースされた“満月の夜なら”、“今夜このまま”を含む12曲が収録された今作は、その才を見事なまでに開花させた作品だ。昨年末には『第69回NHK紅白歌合戦』に出演し、2月18日(月)には日本武道館公演を控えているということからも、世の中から向けられた彼女への注目や期待は目に見えて大きい。そんな状況での今作のリリースは、普通なら気負って当然ともいうべきものだろう。それなのに彼女は、伸びやかで自由なまま、自身の直感を軸にした唄を歌っている。善悪、賛否、真偽が混在した情報が決壊し、乾かぬ間にまた浴びる――そんなことが限りなく続くこの時代では、それこそ「なんとなく」が厭われては根拠を求められ、自分の直感すら見落とし、うやむやにしてしまうことだってあるだろう。けれど、だからこそ、無理矢理自身を鼓舞することもなく感性を重んじて、生活を想い、恋を綴り唄うあいみょんの楽曲がすっと入ってくるのかもしれない。大袈裟な言い方かもしれないが、そういう音楽が世に受け入れられることはひとつの「救い」だなとさえ思う。自分でも久しく触れていなかった、心の奥にある柔らかい場所をつんと優しく突かれては、自分の感性を愛でてあげたいという気持ちになる懐深い作品だ。この作品を「良い」と思えた自分の直感を、私はこれからも大切にしたい。(峯岸利恵)