ノンストップの100分間を捉えるカメラはまるで私たちの目のよう。不意にズームイン/ズームアウトしたり、わずかにピントがズレたりするようなこともあるのだが、それがかえってリアル。ライブ中の興奮状態により、何を目で追うべきか迷ってしまったり、通り過ぎようとした光景の中に何かを発見して注視したりするような、あの時の視線の動きに近いのだ。そのうえでさらに、普通にライブを観ているのでは物理的に見ることのできないようなところまで網羅されている。汗を光らせる斎藤宏介(Vo・G)の横顔は客席からではまず確認できないものだし、回し蹴りのようなしぐさをする田淵智也(B)を下から捉えるようなアングルも臨場感があってよい。鈴木貴雄(Dr)のドラムセットを鳥瞰することができるのも嬉しいポイントだ。
――と、カメラワークの話ばかりしてしまったのには理由がある。本作が収めているのは「ステージ上には自分たちの演奏を楽しむバンドがいて、客席にはそれを観ながら楽しむオーディエンスがいる」という、それ以上でも以下でもないような光景。それが過度に装飾されることなく、そのまま収められているからだ。ロックバンドがステージに立って演奏を始めれば、それだけでスリリングであり、愉快な驚きと感動が次々と生まれていくもの。思えば、UNISON SQUARE GARDENはその一点をとことん突き詰めてきたバンドだった。
こういう作品の在り方はバンドに十分な演奏力がないと成り立たないし、バンドの美学やこだわりが、スタッフ含めたチーム単位で理解されているという前提も必要になってくる。今でこそ圧倒的なライブをするようになったUNISON SQUARE GARDENだが、それこそ過去の映像作品・CD収録のライブ音源等を確認すれば、最初から理想を掴めていたわけではないのだと知ることができるだろう。ロックバンドが君の住む街へと旅を続ける限り、ライブ映像およびライブ音源は、過程の記録という重要な価値を持つことになるのだ。
発売日は12月26日(水)で入荷日はクリスマス。偶然ではあるが、ツアー中も音源リリース時も少し季節外れな感じのあった“サンタクロースは渋滞中”が、ここにきてかなりしっくりくる日程になっているのが面白い。Blu-ray盤・DVD盤ともに、7月31日・大阪城ホール公演のライブ音源を全曲収録したCDも付属。ご自身の環境に合わせてライブの興奮を追体験してみてほしい。(蜂須賀ちなみ)